この世は、無意味だ。





縦横前後上下好き嫌い






背後から人の気配がした。



「なんで、また君は・・・」

「あ、バレた?」



そういって、は後頭部を手でさする。



「なんで僕の後ばかりくっついてくるんだ。」

「だって、好きだからに決まってるじゃない。」



何の恥じらいもなく、さらっと言いのける。

こんな事にも、もう慣れっこ。



「そう言われても、生憎僕は、他人に対して嫌悪感しか抱かないタイプでね。

 君がいくらそう頑張ったからといって、どうにかなる問題じゃないんだよ。」



好きなモノなんかこの世に無い。

嫌いなモノなら、数え切れないほど。



「いいわよ、別に。 だってあたし、石田君を見てるだけで幸せだもん。」

「勝手にしなよ。」



そう冷たくあしらっても、彼女は嬉しそうにしながら後をつけてくる。

いい加減にしてくれないか。



さん、ホントにいい加減にしてくれないか。」



そう言い振り返ると、彼女は更に幸せそうな顔をする。



「何がそんなに嬉しいんだい?」



ずっと前から思ってた、些細な疑問。



「だって、石田君、今あたしだけを見てるじゃない。」

「・・・別に僕は。」

「自発的じゃなくても、石田君は今、あたしだけを見てる。」



澄んだ瞳。

この子は、僕みたいに心が荒んでないんだな と思う。



「・・・そう・・・だね。」



そんな些細な事で喜べるなんて幸せ者だ。

彼女はまた、幸せそうな笑みを浮かべた。

その笑顔で、やっと気付いた。




















僕は、きっと彼女の事が。