One day 季節が巡るのは早いもので。 この間まで暑い暑いって言って、冷房18度に設定して床の上にぶっ倒れてたのに。 今は寒くて寒くてたまらない。 いや、まだ9月。 なのに何なんだ、この寒さは。 あぁ、もう草木と一緒に枯れちゃいそう。 「はーい、さん、今週のジャンプ買ってきましたよー・・・って、 暑くないっすか、この部屋?」 そりゃそうだ。 暖房30度でガンガンだもの。 それでも寒くて寒くて仕方がない。 「寒いの・・・」 そう言い、はすっぽり被っていた毛布から頭をひょっこり出した。 「そぉですかねぇ? アタシは全然平気なんですが。 もしかして、さん、風邪ひきました?」 喜助はの額に手を当てる。 きっと36度前後程の熱を帯びた喜助の手さえ、には心地よく感じた。 「・・・もの凄く熱いですね。」 「あー、やっぱり。」 なんでこーなったのか。そう自分に問えば答えは易々と出てきた。 昨日の午後3時、夏の盛りをとうに過ぎたのに、アイスなんか買って食べた。 午後5時、ちょっと蒸し暑かったからと言って、環境問題そっちのけで冷房ガンガンでうたたね。 午前1時、お風呂でまたもや睡眠をとる。 午前2時、お湯がすっかりぬるくなり、寒気を感じたところでお風呂からあがる。 午後2時30分、髪の毛を乾かさないまま就寝。 朝起きた頃には寒気が止まらなくて、エアコンの設定を冷房から暖房に変えて今に至る。 「さ、はやく布団に入って。 寝てなきゃ駄目ですよ?」 「えー? だって布団って入ったとき冷たいじゃん。 あの冷たさが嫌。」 子供の頃からそうだった。冬なんて特に。 電気毛布を布団に就く1時間前から、スイッチを入れておいた程。 「・・・困りましたねぇ・・・」 「いーよ、別にこのままで。たぶん明日には治るから。」 「駄目です!! もしアタシの大切なさんがこの風邪で命を落としたら!!!! アタシはどうやって生きていけばいいんですか!!!!」 甘い台詞をどうもありがとう。 スピードワゴンもびっくりだよ、きっと。 あぁ、頭が痛くなってきた。 「あ、アタシと一緒に入りますか?」 「は?」 「アタシと一緒に布団入りましょうよ。 そしたら冷たくなんてないでしょう?」 「ん、まぁ、そうだけど。・・・だけど喜助、変な事しない?」 一番怖いところはそこ。 残念だけど、今の私は本当にそういう気分じゃないから。 「変な事っていいますと・・・あーんなことや、こーんなことの事ですかねぇ?」 「あ、いい、遠慮しとく。」 「そんな事言わないで、さ、ほら。」 「え、ちょっと!!!!」 喜助はを朝から引きっぱなしでたたんでいない布団の上へと追いやった。 きちんと布団をかけ、いつも被っている帽子を畳の上に置く。 久しぶりに見るその素顔の喜助と目があった時、の心臓が強く脈を打った。 「アタシが治してあげますから。」 狭い布団の中、の耳元で喜助が呟く。 その言葉とは裏腹に、の体温が1度あがった。 布団の中はとても暖かかった。 「・・・本当に何もしないの?」 この体制に入ってから5分が経過したと思える頃、戸惑いながらもが聞く。 「え、なんですか? さんはあーんなことや、こーんなことをして欲しかったと?」 「ちっ、ちがう!!! ただ、喜助にしては珍しいなって思っただけで!!!!」 あわてるを前に、喜助は可笑しそうにククッと笑った。 「いくら可愛い女の仔が無防備で前に居ても、風邪引いてる仔に手は出しませんよ。」 喜助はの頬に軽く唇を落とした。 甘い行為に、は赤面して寝返りをうち、喜助とは反対向きになった。 きっと、そんな甘くて、軽率で、利口で、焦れったくさせる喜助にどうしようもないくら惚れてる。 「・・・馬鹿・・・」 そう呟いた時には、喜助は深い眠りについていた。 は喜助の方に向き直り、そっとその唇に自分の唇を重ね、 微かに口角を上げたまま目蓋を閉じた。 また冬がやって来る。 元から寒いのは苦手、だけど。 この暖かさなら、枯れる前になんとか乗りきれるかもしれない。 |