いやだ、いやだ。









One way










「何泣いてんだよ?」

「泣いてなんかいません!!」

「泣いてるじゃねぇか・・・」

「ちがいます!!」

「はぁ。」



目の前で泣き出したを前に、冬獅郎はどうにもできずに居た。

どうしたんだ? と尋ねても、ただただ首を振るばっかりで、

大丈夫か? と尋ねても、ただただ黙るばっかりで。

仕方ない、といって放っておく訳にも行かず、こうしての傍で泣き止むのを眺めている。



「もう、あっちへ行ってください!!」

「なんでだ?」

「・・・隊長の顔、見たくないです。」

「俺が何かしたか?」



女心というものは、どうもわからない。

彼女が泣いている理由を探しても、これといって見つからない。

いつものように自分の恋の進路相談をしていた途中で、今の状態に至っているのだから。



「隊長は、雛森副隊長とでも仲良くしてたらいいじゃないですか!!」

「なッ」

「好きなら好きって、言えばいいことでしょ!?」

「俺は、その、だな、」

「ほら、でてって!!」

「おい、ちょっと待てよ!!」



ありったけの力を振り絞って、自分の隊の隊長を執務室から追い出す。

いっそのこと、この世界が壊れてしまえばいいのに、そうも思ったりした。

でも本当は隊長は何も悪くない。

彼は私の想いなんか、これっぽっちも気付いてないんだから。

隊長の中での雛森副隊長の存在を知ったとき、「痛手を負いたくない」という理由で自分の気持ちを偽った。

『素直に応援してあげよう』なんて無茶な事思うから、こういう結果になった訳で。

後に引き返せなくなってから、隊長への想いが軽いものでは無かった事に気付いたり。

全部私が悪いのに。

そう思うと、もう涙は留まる所を知らない。

まるで洪水のように、次から次へと溢れ出す。

こんな状況で優しくなんかされるから、よけいに想いが増していく。

あぁ、もう。



「悲しい恋をしたのね、ちゃん。」



そう呟いたって、救われやしないのに。